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視準

<労基法でよもやま話>(55)
10万円の使い込み、首になる?

《質問》出来心で、つい会社の金を10万円程、私的な飲食代として使い込んでしまいました。まだ、発覚していませんが、自供すると解雇されてしまうように思い、なかなか正直に自供できないでいます。このような場合でも解雇されてしまうのでしょうか。
《回答》(前略)実際に会社が懲戒解雇にするか否かの判断はなかなか難しいですが、刑事事件相当の行為に至る経緯や事情、その従業員の地位、責任、勤務年数、人事評価の状況、会社の社風やこれまでの実績、懲戒処分の前例等によって結論は変わってくると思われ、懲戒処分としては解雇だけでなく、例えば、降格、出勤停止、減給等の処分もありえると思われます。
(厚生労働省サイト「確かめよう労働条件」)
 事務所に札束を持ってきてもらったとき、普段見ることのないお札の厚みと封印に大変緊張したのですが、金融機関の担当の方は運搬するのも全然平気で、「仕事で扱うお金はお金じゃないですから」と。
 そんな大きなお金と違って、10万円というのは普段自分が日常生活の中で扱っている範囲の金額であるがゆえに、かえって質問者は現実味のある使えるお金に感じてしまったのかもしれませんね。とはいえ、使ってしまったのは会社のお金ですから犯罪行為になってしまいます(ただし、回答の省略部分には10万円程度で警察が届けを受理するか、起訴されるかは一概には言えないと書かれています)。
 さて、労働者を懲戒するにあたっては就業規則でそれを定めておく必要があります。当館所蔵の就業規則集などを見比べたところ、懲戒の程度や内容、懲戒の事由に結構違いがあります。『リスク回避型就業規則・諸規程作成マニュアル』(日本法令/2015)では「会社内における窃盗、横領、背任又は傷害等刑法等の犯罪に該当する行為があったとき」は「諭旨解雇又は懲戒解雇に処する。ただし、情状により減給又は出勤停止とする場合がある」としていて、情状酌量の余地を残す書き方を提示しています。
エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)  千本 沢子


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