会場に足を踏み入れるとそこは真言密教のマンダラ世界。国宝の《五智如来坐像》(京都・安祥寺)をはじめとした多数の仏像や仏画が生み出したのは、空海が「目で見てわかる」ことを強調した「マンダラ空間」だ。 奈良国立博物館で開かれている生誕1250年記念特別展「空海 KUKAI―密教のルーツとマンダラ世界」は、高野山を開いた弘法大師・空海が日本にもたらした真言密教に焦点を当てた、かつてない展覧会だ。 5章で構成された本展。空海が伝えた密教を表現するマンダラ世界の再現に始まり、インドで誕生した密教の伝来ルート、入唐した空海が運命的な出会いをした師、恵果と密教の教え、そして帰国後、神護寺を拠点に密教の流布に着手したことなど、密教の全貌と空海が果たした事績が解き明かされている。 国宝28件、重要文化財59件など各地で守り伝えられてきた密教の名宝が集結した本展は見どころも多い。中でも6年間の修理を経て初の一般公開となった、空海が制作指揮した現存唯一で最古の両界曼荼羅(まんだら)である国宝《高雄曼荼羅》(京都・神護寺)や、最澄に宛てた国宝《風信帖》(京都・教王護寺、5/12まで)など、書の名手であった空海直筆の書は必見だ。 空海と真言密教の魅力に触れられる展覧会だ。
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